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RIDER FORUM ZERO

ライダーフォーラム ゼロ

ゼロベースで ライダーの命が大切にされる二輪環境を考える!

ギャラリー

事故は本当に自己責任か?

= その疑問からライダースパラダイスが始まった =

『38歳の男性会社員が、伊豆スカイラインをオートバイで走行中、運転操作を誤りガードレールに激突し・・・』というニュースを耳にされた時、ほとんどの方はその原因を「スピードを出し過ぎたのだろう」とか「腕が未熟だったんだな」と思われるのではないでしょうか。つまり事故は、オートバイに乗っていた本人の自己責任だと。確かに単独で事故を起こしたのですから、原因を作ったのは間違いなく本人です。しかし、私にはそれが本人だけの責任ではなく、一人一人の命を大切にできていない二輪環境にも原因があるのではと考えるようになりました。


●峠が「俺たちのサーキット」

私がバイクに興味を持ったのは、中学生の時です。同じクラスの友達が貸してくれたバイク雑誌の中の1台に一目ぼれしてしまい、大学生になったら必ず乗ると決めました。それから5年後、大学生になった私は、迷わず免許を取り、250ccのオートバイを手に入れました。それからは、通学はもちろんの事、休暇には日本中をツーリングするというバイク三昧の日々を送りました。

当時のバイク雑誌では、峠が「俺たちのサーキット」として取り上げられ、ヒザが地面に付く程のレーシーな走りをしている記事も、撮影場所はサーキットではなく、箱根等の一般道ということが多々ありました。映画やマンガなどでもそれは同じで、一番の情報源である雑誌や映画やマンガの常識は、当たり前のように普通のライダーの常識となり、免許を取った私達の間には、バイクの練習やスポーツ走行は山でするものという意識が根付いていました。

バイクに乗らない方からすれば、練習やスポーツ走行はサーキットでやるものと思われるでしょうが、サーキット自体が少なすぎ、またサーキットは順位を競う敷居の高いところと思っていますから、普通のライダーにとっては、走行を楽しんだり安全のために練習する場所ではありませんでした。


●“私達の常識”に疑問

そんな“私達の常識”に疑問を持ったのは、仲良くなった仲間から「この前の土曜日、あのコーナーで誰か亡くなったらしい」とか「一緒にツーリングしていた仲間が、コーナーを曲がりきれずに自販機に突っ込んで亡くなった」という話しを頻繁に聞くようになった頃でした。

楽しいから、便利だからバイクに乗っているはずなのに、ほんの少し操作を間違っただけで死んでしまうなんて、何かおかしい・・・。そして同じ頃、叔母からは「山道でバイクに抜かれると怖くて仕方ない」と聞かされました。ライダー本人は気持ち良く走っているだけだったり、一生懸命練習しているつもりでも、人に怖い思いをさせていた。やはり何かがおかしい・・・。そう感じましたが、一般道以外で、安全かつ社会の迷惑にならず走れる場所をつくるなんて私には無理、そんな事はいつか大きな企業がやってくれるだろう、と考える事をやめました。


●このままでは、命が守られない・・

しかしあれから30年、ふと気付くと、状況はほとんど変わっていませんでした。「免許が取れた=バイクを安全に運転する技術が身に付いた」ではないにもかかわらず、免許取得後の練習場所は数えるほどしかなく、この数十年でバイクは唖然とするほど高性能化しましたが、他者に迷惑を掛けずその性能を楽しめる場所や機会は非常に少ないままでした。そのためライダー達は、今なお一般道で練習やスポーツ走行をしており、転倒事故や他車両とのトラブルは相変わらず起きていました。これ以上待っても何も変わらないのかもしれない。このままでは、命が守られない・・・。


●重い腰を上げる

正直に言えば、もっと前に気が付いていました。しかし、ヒト・モノ・カネ・コネがゼロの一ライダーにとって、莫大な経費が掛かる『社会と共生できる理想の二輪環境を整える』なんてプロジェクトは荷が重過ぎて、気付かないフリをしていたように思います。

重い腰を上げたのは、2006年2月に自分が改めて練習する機会を得た時でした。Uターン一つ満足にできず、自分にはバイクの才能がないと思い込んでいましたが、信じられないことに、ほんの2,3回集中して練習しただけで出来るようになったのです。Uターンが出来るということは、バイクの基本的な操作ができると言う事、つまり一般道での安全マージンを上げられると言う事です。やはり気軽に練習できる場所がもっとたくさん必要だ!。それが切っ掛けとなり、同じように不安を感じている人が気兼ねなく練習できたり、道でついスピードを出してしまう人が思いっきりバイクを走らせられる場所をつくろう、と思い立ちました。


●鈴鹿ツインサーキットでライディングイベントをスタート!

しかし、協力者探しはそう簡単にはいきませんでした。「いい活動ですね。うちは企業なので利益にならない事は手伝えませんが、頑張って下さい」という返事を何度ももらい、やはりダメかとくじけそうになった頃、偶然通りかかった鈴鹿ツインサーキットさんにふらりと立ち寄りました。捨てる神あれば拾う神あり、とはこの事でしょうか、趣旨に賛同して下さった鈴鹿ツインサーキットさんを会場として、2006年8月にライディングイベント「ライダースパラダイス」をスタートさせる事が出来ました。それから足掛け9年、延べ2万人以上のライダーに接してきた経験とアンケート結果から、「事故を起こさないライダーになるには、まずバイクを深く知る事。深く知るには、安全な場所で集中してバイクに乗る事が不可欠である」という確信を持ちました。


●二輪事故は全て自己責任とは言い切れない!

ほとんどの人は、どれほど口で“安全に”を繰り返されても、なかなか自分の事として捉えられません。私もそうです。しかし、集中して乗る事で二輪の難しさを実感すると、誰に言われなくても、リスクの少ない乗り方や装備について考えるようになり、自然に事故を起こさないライダーに変化してゆきます。そう考えますと、事故は本人の自己責任だけではなく、ライダー誰もがクローズドコースでバイクと向き合い、オートバイという物やそのリスクを認識できる環境が整っていない事にも、原因があるのではないかと思います。


●死亡事故ゼロを目指せる二輪環境を一緒に創って下さい!

最後にお願いです。
命は一つです。バイク事故で死亡と簡単に伝えられたその人は、誰かの子供、誰かのお父さん、誰かのお母さん、誰かの恋人、誰かの友達です。一人一人掛け替えのない命だからこそ、死亡事故ゼロを目指せる二輪環境を創りたいと、強く思うようになりました。

当事者であるライダーはもちろんの事、二輪関連企業やショップ、メディア・警察・行政など関係する団体がタッグを組めば、事故につながる間違った“ライダーの常識”を変えられます。小さなことからで結構です。消えるはずだった命が一つでも助かることを願い、活動にご協力くださいますようお願い申し上げます。

2014年12月28日
特定非営利活動法人ライダーズネット
理事長 季和美のり子


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